サモエド犬の火葬の時の事でした。
お客様は、トランクにサモエドちゃんを寝かせて連れていらっしゃいました。
サモエドは、体重の割りに大きく見えます。
ロシアが原産国であるので、寒さに耐え抜く為に真っ白な毛にいっぱい覆われているので実際よりとても大きく見えるのです。
このサモエド犬の足の上にドライアイスが載せてありました。
両足が曲げる事が出来ずに、いっぱいに伸びているのでトレーに載せて礼拝所で曲げてやることに致しました。
「あれ・・・。」足が曲がらないのです。
通常、殆どの犬は亡くなってからお客様が曲げられなくても、私たちが遣るとすぐに曲げることが出来ます。
ところが今回は曲がりませんでした。
どうして曲がらないのかチョッと触ってみると直ぐに分りました。
それは、足の関節の所が物凄く冷たいのです。
ドライアイスが片方の足の上に置いてあった事を思い出しました。置いてない方の足は直ぐに曲げることが出来ましたが、ドライアイスの載っている方の足はビクとも致しません。
これは、ドライアイスでこのサモエドちゃんの関節が凍ってしまっているのです。その為に曲げることは出来ませんでした。
お客様には「曲げる事はできませんでした。」と言っただけにしておきましたが、ドライアイスは本当に強力な冷却能力があり、入れた廻りは殆ど凍ってしまっています。
通常ならばそれで良いのですが、このように曲げる必要がある時には困ってしまいます。
大型犬の場合は、特に大型の火葬炉に寝かせて入れる時に足が引っ掛かってしまって火葬炉の断熱材を剥がしてしまう可能性があるので申し訳ありませんが曲げさせて戴いています。
礼拝所でお葬式を厳粛に行なった後に火葬炉に入れますが、足が下の方に伸ばしたままでも何とか火葬炉に入りそうだったので無理はしませんでした。
火葬炉の上に載せて入らないような場合は、申し訳ありませんがかなり力を入れさせて頂いて足を曲げる作業を行なう場合もあります。
サモエド犬は、比較的火葬する機会が少ない犬種です。
私たちのペット霊園でも、始めて21年10月24日に青梅市大門のリュウちゃん9歳の火葬してから今回で5件目です。
年齢は、今回のサン太ちゃんが12歳11ヶ月で長寿記録が更新されました。
25年10月8日に自然埋葬したダットリーちゃんが、12歳4ヶ月で今までトップでしたが今回で2位になりました。秦野市からのサモエドちゃんが3位です。
今回のサモエドちゃんは、オスでしたが18キロと体重はチョッと小ぶりでしたが、見た感じはとても大きく見えました。
火葬時間は、70分間でした。
火葬したお骨は、真っ白でとても綺麗でした。特に歯が歯磨きはしていないそうですが、真っ白でとても素敵です。
「肝臓の数値が異常に高かったです。」とお客様が言って今したが背骨に近い部分に小さな腫瘍の塊がありこの腫瘍の影響で異常な数値になっていたのではないかと推測出来ます。
皆様に小骨の説明をさせて戴きながら、足の指先のお骨を手の平に載せて上げました。「これって何?」と言いながらも「爪だ・・・。」とお孫さんが叫びました。
そうです。これは爪の下にある足の指先のお骨なのです。
爪のように前に曲がっていて尖っているので、一見すると爪に見えるのです。
このお骨は、本当に人気があります。
皆様がそのお骨を個人で持帰りたくなるお骨なのです。今回も3名の方がビニール袋に入れて持ち帰りました。
真っ白いお骨は、腫瘍の痕はありましたが総じてお骨の下に敷いてある網にも殆どくっ付いていなくて老衰の兆候が出ています。
お客様たちに訳を説明してから「この子は肝臓に腫瘍がありましたが、老衰だと思いますよ。」と言うと「良かった。天寿を全うしたのですね。」と笑顔が漏れてきました。
12歳11ヶ月の年齢は、今まで火葬したサモエドちゃんの長寿ですしそうなんでしょう。
皆様和気藹々の内に6寸の骨壺にお骨上げが終了して持ち帰りになりましたが、老衰と聞いてからは晴々としたお顔がとても印象に残りました。
大事な、大事なサモエドちゃんはお亡くなりになりましたが、飼い主の皆様の心の中には永遠に思い出が残ってくれたと思っています。
長寿記録を樹立したサン太ちゃんのご冥福をお祈りいたします。・・・合掌。