「本日ラブラドールが死んでしまいまして火葬を明日お願いしたいのですが。」と八王子市内のお客様からお電話を受けました。
「ラブラドールちゃんは何キロですか?」とお聞きすると38キロで、立会火葬をご希望のお客様でした。金額も50,000円でご了解いただきご予約をお受けしました。
最近の傾向として、35キロ未満までしか立会火葬はお受けしていません。理由は、昨年25年11月に41キロのラブラドールを火葬した際に195分も掛かってしまった事がありました。
その為、立会火葬でお客様のお待ち頂く時間や次の火葬を受け付ける際に何時に次のお客様の時間を設定したら良いか分からないためです。
今回は、15時から3時間の予定で時間配分をすることに致しました。
火葬時間が最高掛かって、120分事務処理や火葬場からの往復時間、お骨上げで60分に配分です。
でも今回は、このラブラドールちゃんを今日の最後の火葬にするつもりでお受けしました。ラブラドールちゃんでも脂の付き具合に依ってはどの位時間が掛かるかわからないからです。
15時丁度にお客様はペット霊園に到着です。
車の後ろのトランクにお布団を敷いて寝かせて連れて来てくれました。
トランクから、霊園の大型犬用のトレーに下に敷いてある毛布もと一緒に載せて礼拝所に運びました。大きいです。大型犬用のトレーから頭の半分がはみ出しています。
38キロとお客様が言っていましたが、もっとあるように感じました。頭も凄く大きいですし、お腹の所もむっくりと持上っています。
「お客様にこの子は腹水がたまっていますか?」とお腹をさすりながら聞いてみることにしました。「腹水ではなくて唯、肥っているのでお腹が大きいのです。」と一番きびしい回答を戴きました。
肥っているペットちゃんは、その脂肪が噴き出して受け皿に溜まってしまいその脂分が燃えるのに凄い時間が掛かるのです。
その為、火葬方法も最難度のS-30火葬にすぐさま変更することに致しました。
礼拝所で行われてお葬式は、お客様方のこのラブラドールちゃんに対する愛情の強さをしみじみ味わう優しさに溢れた振る舞いが一杯見受けられました。
お葬式が終了して大型の火葬車に付いている火葬炉に運ぶのは、お客様方に。丁度男性のお客様が2名いらっていたので火葬炉まで運んで貰いました。
火葬炉でに載せるとやっぱり大きいです。火葬炉にいっぱいでした。その為バスタオルも一緒に火葬したいと言っていましたが、それは遠慮していただき、食べ物とお花でいっぱいにして最後のご供養です。
ラブラドールちゃんが「火にあたっても熱くないように」お不動様の真言で御祈祷をさせて頂いて納棺いたしました。最後になるとやっぱり寂しさがいっぱいに溢れてきます。皆さん目頭を抑えて涙、涙のお別れです。
火葬車は、皆様のお見送りを受けて火葬する場所に出発しました。
これからが本番です。火葬場について今回はいつも付けない煙突を付けて火葬です。大きい犬ちゃんですから、煙突から火柱が上がる場合もありますので煙突で防御するのです。
15時35分に点火、
火葬は順調です。炎も赤い炎で全く問題ない滑り出しです。火葬して5分から10分で一つの山場が訪れます。
それは、脂が燃え始める時期なのです。
今回は、20分経っても炎も赤い炎です。煙が上がり始める赤黒い炎になっていません。
25分経過した16時に一次火葬炉の燃焼を停止しました。
これは、二次火葬炉の温度が上がってきていて1000℃を超え掛かっているので温度を下げる目的で行いました。
火葬を開始して25分間一次火葬炉を燃焼させていても炎が順調なのは、S-20火葬のお蔭です。
もう半分になっています。これからが本格的な燃焼になります。
ここで、一次火葬炉に空気の強制注入をする事にいたしました。
これは、黒煙を防ぐために行う行為で燃焼がドンドン強く鋭くなって行っても大丈夫なように行う方法です。
段々燃焼も鋭さを増してきました。
ここで、火葬炉の温度を一旦下げる対策を行いました。火葬炉の燃焼具合が鋭く燃え始めてくると黒煙や臭いの原因になります。
そこで一次火葬炉の温度を下げて火葬炉の燃え具合を柔らかくなるように調整してやるのです。最近はこの方法を開発してから温度を下げることが出来て本当に火葬の失敗がなくなりました。
45分ほど経過した16時20分に火葬炉の再点火です。
今までは、温度を上げずに脂の絞り出し作業を行っていましたが、これからは本格的な燃焼作業に掛かります。
再点火した火葬炉の燃え具合の様子を10分ほど見ていてから、もう一段上げて火葬炉の自動運転に入りました。この作業は1130℃を限度に燃焼を加速させる過程に入ることを意味しています。
38キロの肥っているラブラドールちゃんの火葬としては、凄く順調です。
これから、火葬炉内の耐火煉瓦の置台の脇から下に溜まった脂が加速度的に燃えてきます。
その証拠に、置台の脇から炎が吹き上がっています。
この受け皿の上に溜まった脂の燃焼がこれから火葬時間を左右します。自動運転で高燃焼を継続するのはラブラドールちゃんの燃焼とこの溜まった脂分を如何に早く燃焼させるかを同時にする事です。
火葬も最終局面を迎えました。
開始して75分ほど経ってすっかりお骨になった最終局面は、燃え残った物を綺麗に燃え尽きるまで行う作業です。
この過程を粗末にすると、綺麗なお骨でお客様の前に出すことは出来ません。
燃えカスの完全燃焼やお骨の色を真っ白に仕上げるために時間を掛けてやる作業です。
最近は、この作業に新たな方法を開発しました。
この作業はB燃焼と呼んでいるのですが、秘密なので詳しく書けません。このB燃焼作業を行うと自動運転の火葬炉自体も温度が上がらずに高燃焼が持続します。
また、お骨の下や火の当りにくい場所の燃え殻が真っ赤になって燃えていきます。このB燃焼をしないで燃え殻の完全燃焼はこの作業を行うより2.5倍位の時間が必要になります。
その為、時間短縮や完全燃焼をさせるうえでこの方法は大変助かります。
燃え殻の燃焼も10分程で完了しました。確認も終わり時計を見ると丁度17時です。
火葬時間は85分でした。
全く問題なくラブラドールちゃんの火葬が終了しましたが、最近はまず問題のある火葬は無くなっていますが、やはり38キロのペットちゃんは緊張します。
火葬を終了してペット霊園でお客様にお骨上げをして貰いましたが、このラブラドールちゃんの頭が大きくて通常の6寸の骨壺ではなくて人間の骨壺と同じ7寸の骨壺にお骨上げをして貰いました。
お骨上げは、他の担当者が行いましたので内容は定かではないのですが、お帰りの時に「有難うございました。」と言って車に乗り込みましたが、お骨を確りと胸に抱きかかえているのが印象的でした。
ラブラドールちゃんのご冥福をお祈りいたします。