朝一番で伺ったのは羽村市川崎でした。
お庭が広いと言っていましたが本当に広い庭でした。ナビで案内してくれている家は、テョッと道路から離れています。ナビの案内するままに細い路地に入って家の前に止まるとトラックが停まっていました。
車から降りて歩いて奥の家に行くと表札があり、お客様のお名前が書かれていました。間違いありません。
そこから右を見ると太い道路から入ってくる道が舗装され庭の手前まであるのです。ここを入ってくれば良いと思い車をバックさせて太い道路からお庭に入れる事にしました。
お客様のご希望は、「この庭で火葬してほしい。」と言っています。
でも、20キロを超えたシェルティーの火葬は、最難関の火葬です。ここでやってもし臭いが出たりしたらご迷惑になります。
私たちは、一時他で火葬することを考えました。
もし、脂にドンドンと火がついて過燃焼を起こしたら大変です。丸々としたお腹に脂肪がいっぱいついているのか、それとも腹水が溜まっているのか、お客様にそのことを聞きましたら、「亡くなってからお腹が大きくなりました。」と言っていました。
良かった。腹水が溜まったみたいですね。
それなら、臭いが出た場合の遮蔽物の調査をする事にしました。
ここで建物の配置を見てみると風が東西に吹いていますが、確りした大きい建物が西側にもあり、東側にもあり丁度風を遮るように経っています。
又、南北に風が吹いたとしても北側には母屋があり遮ってくれます。
この様な配置の真ん中で火葬するのですから臭いは心配ないかと思いました。又黒煙は過燃焼を抑える術は自信がありますので大丈夫。
火葬スタッフも「ここで遣りましょう。」と言っているのでお庭で火葬することに致しました。
寝ているシェルティーちゃんをご家族3人掛かりで運んでいらっしゃいました。
火葬炉に寝かせてお花でシェルティーちゃんをすっぽり覆うようにお花でいっぱいにしました。
お別れのお線香も確りと行いました。
いつも遣っている事なのですが、「お不動様の真言で祈祷させて戴きました。」みなさん確りと合掌をして拝んでいます。
目から涙落ちてきています。
辛いお別れですが、如何しようもありません。
確りとご供養をさせて戴いて納棺させて戴きました。
火葬炉を点火すると微かに炉から吹き出す排気音が聞こえる程度です。
お客様たちももっと凄い光景を想像していたのかもしれませんが、「あんまり音も出ないですね。」
暫く火葬炉の廻りで見ていた家族の方たちも「臭いもしないですね。」と余りに静かに進行しているのにビックしりた様子です。
火葬炉の中で火葬をしているスタッフは、「ゆっくりと時間を掛けてやりますから。」と基本に戻って先ずは脂出し作業から行っているみたいです。
「ゆっくり時間を掛けて火葬する。」と言うのは、口で言う以上に難しい事です。
それは、火葬炉を操作しているスタッフがゆっくり温度上昇を抑えながら「チロチロ」火がついていて脂の絞り出し作業をしようとしても火の勢いが勝手にドンドン上がってしまってゆっくり脂出し作業が出来なくなってしまいます。
温度を上げないでゆっくり時間を掛けて火葬する事はかなりの熟練と温度上昇を止めることが出来る秘密兵器が必要になります。
私たちは、その秘密兵器を開発していますので、急激な温度上昇を食い止める事が出来る自信があり、それを今回も実践しての火葬なのです。
お客様たちも、火葬炉の廻りで煙突からユラユラと光が屈折する陽炎を見ていましたが、30分経っても40分経っても一向にその様子は変わりません。
私達スタッフから言えば、一向に様子が変わらないのが良いのです。
順調に火葬が進行していて過燃焼が起きていない証拠なのです。
お客様たちは、テンデンばらばらに周りからいなくなってしまいました。
そうですよね。全く様子が変わらないのですから。
シェルティーの火葬は、最初の燃え上がり、途中の過燃焼、そして最後が炉の中に溜まった脂の完全燃焼が大変なのです。
私たちがいつも苦労しているのが、最後に炉内の溜まっている脂を早期に完全に燃え尽きさせる事がまだうまく行っていません。
今回も、火葬時間は120分かかりましたが、そのうちの50分ぐらいはこの炉内に溜まってしまった脂の燃焼させる時間なのです。
120分で取り出しましたが、未だ700度位では煤煙が出ていました。温度が500度位に下がるとそれも終了いたしましたが、この対策が私たちにとって必要な事なのです。
火葬が完了する時間には、皆さん何処からともなく火葬炉の廻りに集まってきました。
火葬炉を開ける瞬間から見たいのでしょうね。
真っ赤になっている火葬炉を開けると2メートル位離れていてもこの熱風が伝わってきます。
「凄く熱いんですね。」「でも、綺麗。」「背骨が揃っている。」と銘々が声を発しています。
庭の真ん中に折りたたみの高さのあるテーブルを出してそこにトレーに載せた火葬したままのお骨を載せました。
頭から、背骨、骨盤、大腿骨、仙骨、尻尾、足の指の骨等を説明していくと皆様身を乗り出して聞いています。途中で指先のお骨を皆様の手の上に載せて上げました。
「これって何ですか?」「爪」と皆さん頭を捻りながらお話しています。
「これは、足の指先の一番先のお骨です。」と言うと「爪みたいな格好しているので、爪かと思いました。」とニコニコしながら、その指先のお骨を見ています。
遠くに帰る一人の人だけその小さなお骨を別の壷に入れて持ち帰りました。
シェルティーちゃんが亡くなった知らせを受けて一昨日戻ってきて、今日火葬するのを立会ってから夜に帰ると言っていました。
本当に皆さんこのシェルティーちゃんを愛しているのですね。
大事な大事なシェルティーちゃんの綺麗なお骨を見る事が出来、以前骨折した後のお骨を繋いであったワイヤーも確りと残っていました。
お薬の色が肝臓に出ていて、腎臓の所が真っ黒い色がお骨についていました。
又、本来は13キロ位のシェルティーちゃんなのでしょうが、肥らせてしまった為に頭のお骨がスカスカで糖尿病も患っていた見たいでした。
お骨を見て病状も分かり、小さな珍しいお骨も教えて貰い皆様確りとシェルティーちゃんを見送った高揚感に溢れていました。
とても素晴らしい家族の中の本当に一員として暮らしていたシェルティーちゃんのお骨は当分家の中においておくと言っていました。
お骨上げした骨壷をお渡しすると確り抱っこして受け取りました。
どうぞ、シェルティーちゃんが亡くなった寂しさを乗り越えてこれから新たな生活を取り戻してほしいと祈念しています。
安らかにお眠りください。