日野市からのラブラドール35キロの火葬をしたときの話です。
お客様の御要望は立会火葬がご希望でしたが、35キロ以上あると立会火葬をお受けする事は致しておりません。
訳は、35キロを超してきますと、脂分の多さで火葬時間がとても予定の時間で終わらない場合が多くて、お客様にご迷惑を掛けてしまいます。その為、お預火葬にして貰っています。
「予定の時間に終わらない。」と言うのは、脂分が多くてまず最初の関門は、脂出しで時間が掛かってしまいます。特にこのクラスの火葬は後の火葬が入っていない夜間に行う場合が多いので、この夜間火葬では、煙突から火柱が出てしまうからです。
今回のラブラドールちゃんも35キロと言うととてもふくよかでとても素晴らしいラブラドールちゃんでした。お客様が車のトランクにシートを敷いて連れていらっしゃいましたが、そのトランクから火葬炉に載せる段でもやっとの思いで載せる事が出来ました。
火葬炉に載せたラブラドールちゃんは、火葬炉いっぱいの大きさです。
後ろの尻尾が外にはみ出してしまうので足と足との間に挟んで火葬炉の蓋を閉める状況でした。
今回は、このラブラドールちゃんを火葬するために火葬炉の修理をしてから臨みました。訳は、火葬炉の受皿を昨年の12月22日に新たな受皿と交換して受皿と台座の間を確りと塞いで起きましたが、その間がやはり上手くくっ付いてくれずに間が空いてしまっているからです。
昨年中もこの間が空いてしまっている為に、超大型の犬ちゃんの火葬では、遺体の火葬自体は終わっていてもこの隙間に入った脂分の燃焼が終わらずに大変時間を費やして終了するという事がいつもありました。
酷い時には、大型犬から出てきた脂分が炉の外に漏れだしてしまってそれが取れずに厭な臭いが充満してしまって大変困ったこともありました。
そこで、今回の35キロの火葬に臨むにあたって、その隙間を一時的でも良いからファイバーキャストを使って埋めると同時に炉台から零れ落ちた脂分を受皿に戻すように細工も致しました。
それで臨んだのですが、もう一つの難問がありました。
それは、火柱対策です。
この火柱対策については、何度も何度もやり方を繰り返して色んな方法を試してみているのですがどれも火柱が出ない火葬方法が見つかりません。
今回も、17時47分に火葬を開始して17時54分の625℃で火葬炉の点火スウィッチを切って脂出しが始まりました。
今回の火葬も当然S火葬を行っていますので、過燃焼の恐れはありません。火柱対策と脂の燃え尽きる時間の問題が飼行ける出来れば心配ない火葬なのです。
火柱は、600℃位の所ででてきます。
その時点で一次火葬炉のスウィチを切るのですが、温度はそれから60〜70度位上がって下がってきます。
これはS火葬のお蔭です。
この600℃の火柱の壁を中々破ることが出来ません。
時間があればその状態で「500℃で点火して600℃でスウィッチを切る。」をずっと繰り返して行けば良いのです。
火柱は600℃で出ますので、595℃で切れば火柱は上がりません。
600℃で切っていますが、煙突からチョッと炎が見え始める程度ですからこの600℃でも全く問題ありません。
でも、これでは犬の体から出た脂分が受皿に溜まるだけ溜まってしまって燃え始める事はありません。その為にこの脂出しで600℃でスウィッチを切る事だけでは時間ばかり掛かってしまいます。
まして大物ですと、この出てきた脂分が受皿の容量を超えてしまって溢れてしまいます。
その為に、この600℃からの脱出が必要なのです。
今回は、脂の確りのっているラブラドールちゃんでしたので、「1時間を目途に脂出しをして後1時間で燃焼をする。」と言う予定で火葬に取り組みました。
脂の燃え残りの時間は、今回は「受皿と炉台の間に入らない。」と言う前提です。
この為に1時間を超えた時からこの600℃の壁を脱するする方法と試みました。
1時間したところで火柱の出る温度が643℃と上がって来たので一次火葬のスウィッチを切って最高温度を超えて時点で強制空気の注入に入りました。
これだと新鮮な空気が入って急速に温度は下がって来ます。
次の火柱が出る気配の18時58分の677℃では、強制空気の注入もさらに一段階上げて火柱を防ぎ、そして19時07分の840℃では最大の空気の強制注入を行い燃焼温度を上げて行きました。
今回のこの強制空気の注入に置いて温度を上げる方法には、一旦温度が下がり始めると一時一次火葬炉を点火させますが、すぐに止めて温度の上昇をさせて下がり始めると又点火して温度上昇をさせていきます。
しかしながら、この一次火葬炉の点火は直ぐに止めないと煙突からの火柱が出てしまいます。
今回は、この強制空気の注入によって火柱の出るのを防いで燃焼温度を上げて速度を上げながら火柱対策が出来ました。
強制空気の注入による温度上昇を計りながらの燃焼は30分間続きました。
そして、その後は自動燃焼に入って29分後に火葬全体が終了いたしました。
通常は、これから隙間に入ってしまった脂分の燃焼が続くのですが、今回はファイバーキャストでの補修が功を奏して遺骨の燃焼終了と同時に火葬が終了した次第です。
今まで色々な方策を致しましたが、今回火柱を出さないためには強制空気の注入を計る事と同時に火柱が上がりそうになると風量の増加をしながら火柱対策で温度を上げる事が出来ました。
これも、何回も何回も色々な方法を模索した結果がこの火柱を出さない火葬技術の習得に結び付いたと思います。
今後もこの火葬技術をより一層磨いてこの技術を完成させたいと思っています。
でも、この方法が見つかったことに依って大型犬の火葬ももう一段上に行けるのかと嬉しく思う次第です。
お客様も、予定していた3時間ではなくて2時間でお骨の火葬が終わった事で夜遅くにならずに済んだことを喜んでいらっしゃいました。
火葬するには、一次火葬炉を点火して火葬いたしますが、火柱が出ないようにするには、一次火葬炉の点火のスウィッチを切って燃焼させる事なのですね。