アメリカンショートヘヤーの7.6キロって大きいですよね。
お客様が、段ボールに入れて連れて来た時に礼拝所で拝見したのですが、その時はお顔を見た程度でしたのでこんなに大きいとは思っていませんでした。
お葬式も終了して火葬炉に載せた時です。
飼い主の女性もやっと持上げたような格好でしたが、火葬炉に寝かせていただきました。
中型犬でも10キロ未満のワンちゃんはお腹がヘッコンでいるのが多いのですが、今回のアメリカンショートヘヤー猫ちゃんは違います。
お腹にたっぷりと脂肪が溜まっているみたいです。
触ってみると感触がとてもたっぷりした脂肪(柔らかくて重たそうな)の感触が伝わってきます。S火葬で対応しているのですが、最近にない大物です。
火葬開始してから暫くの間は、S火葬が効いていて全く問題なく進んで行きました。
所が、火葬を開始して15分ぐらい経った頃から状況が変わってきました。
そうなのです、S火葬の効果が切れて来たのです。
ここで、高燃焼をさせている一次火葬炉のスウィッチを低燃焼に一段下げて燃焼を続けました。
そのうち、火葬炉の中の炎が覗き窓から「ボッ、ボッ。」と出てきそうな気配です。
この様になると煙突から炎が覗き始める兆候の表れです。
すぐに一次火葬炉の点火のスウィッチを消火に切り替えました。
そして、一次火葬炉の空気弁を開いて自然燃焼に切り替えました。この自然燃焼では未だS火葬の効果が残っていてすぐに燃焼が弱まりました。
弱まってくると又一次火葬炉のスウィッチを点火にして、火葬を促進します。
この時にS火葬をしていると一次火葬炉に点火が難しくなりますので、一次火葬炉の空気弁を絞ってから点火するのです。
そうすると、スムーズに点火できます。
これが、空きっぱなしになっていると赤いランプが点いてしまって点火不能になってしまいます。
S火葬では、火葬炉全体を燃えなくさせていますので、空気弁を絞って点火しやすくする必要があるのです。
この点火したり消火したりを繰り返していきますが、通常の肥っている猫ちゃんの場合はこれの繰り返しで十分火葬業務が流れて行きます。
しかしながら、今回の7.6キロの猫ちゃんは違いました。
一次火葬炉に点火をするとすぐに炉内の温度が急上昇して赤かった炎が黒い炎に代わってきます。これは要注意の炎です。
ここで、急激に火葬炉の中の燃焼を止める必要が出てきました。
緊急処理を行う必要です。
M火葬に切り替えです。
急激に炉内を冷却してこの燃焼を通常の燃焼に変えていきます。
M火葬にすると途端に炉内の炎が柔らかくなり色も黒い炎から赤い炎に変わってきました。これでひとまず安心です。
でも、この猫ちゃんは違いました。
このM火葬での緊急処理を5回行うような始末です。
相当肥っていないとこんなに緊急処理をすることはありません。以前はこの様な時は煙突から凄い炎が出てしまっていましたが、今はそのような事は無くなってきました。
まだ、皆無ではありませんが炎が出る機会が減って来ています。
この緊急処理をしながらの火葬を続ける事30分でした。
その後は、下に溜まった脂分もありましたので緊急処理はしなくては良くなったのですが、まだ下の脂分がありますので通常の完全燃焼は出来ていません。
10分間でこの下に溜まった脂分の燃焼は終わりましたが、今度はお肉の燃焼がまだ終わっていないのです。大きな猫ちゃんでしたので綺麗に火葬が終了するのに要した時間は50分でした。
腎臓廻りに腫瘍の出来始めがあり、糖尿もありました。
頭が薄く崩れそうでしたが奥様が崩さず上手く骨壷に入れました。さすが奥様ですね気合が違います。
この様な糖尿病の頭のお骨はとても崩れやすくて、ご主人がやると殆ど崩してしまいますが、今まで奥様がやると崩したお客様はおりません。
それ程、繊細な指使いで優しく入れる事にたけているのですよね。綺麗に頭のお骨が骨壺に入れる事が出来て大変喜んでもらいました。
とても穏やかなご夫婦でした。
そして、「お花が綺麗ですね。」と言ってくれたことがとても印象に残った、大きなアメリカンショートヘアーの猫ちゃんの火葬でした。