「これってお目目。」
「この前の長いのは、くちばしですか?」
「首のお骨の一番先に尖って見えてそのまま平らになっている所が喉仏です。」
「こんなに一杯綺麗に残るの?」「凄いです。」
「綺麗に残ると聞いていましたが、こんなに綺麗に全部のお骨が残るとは、思ってもいませんでした。」
埼玉県新座市からのお客様が到着してスタッフが声を掛けました。「遠かったですか?」「丁度ドライブするには良い距離でした。」と言う声でコミュニケーションが生まれました。
「この子は、犬の散歩中に木の下で見つけました。」「木から落ちたのでしょうか、上向きになっていました。」
「家につれて帰って看病したら元気になったのですが。」と言ってから「2週間ぐらい面倒見たでしょうか、学校から帰ってきたら死んでいました。」と寂しそうなお顔でした。
「拾ってきた時は、何の鳥か分らなかったのですが、『ピー、ピー』という鳴き声や姿形でヒヨドリと分りました。」
大きな発砲スチロールの箱の中に氷が一杯詰めてあり、その中にタッパウエアーに入った『ひよどりちゃん』が寝かせてありました。
大きさは、クチバシから尻尾の先っぽまでで3センチぐらいの大きさです。体重も15gやっとだと思います。
極小のペットちゃんの火葬は自信がありますが、火葬するときの緊張感はかなり強くなります。極小のペットちゃんの場合は、頭のお骨が飛んでいってしまう恐れがあるからです。何回遣ってもこの緊張感は変わりません。
ヒヨドリちゃんをマットの中央に寝かせてマットの廻りをお花や食べ物で飾ってやってお別れです。お客様は最後までこのヒヨドリちゃんの背中を擦ってやっていました。
蓋を閉じて点火です。
火葬方法やマットに寝かせ方、火の加減等については企業秘密ですので、ここでは書けません。
火葬が開始され、ヒヨドリちゃんの体が燃え始めました。クチバシがドンドン白い色に変わっていきます。
火が体の下まで入りました。どんどん燃え始めています。でもお尻の方はお肉が一杯ついているのでしょう。色は全然変わりません。
火葬時間も中盤を迎えてお腹の辺りから腰の辺りに火が入っているのが分ります。ここで一番注意が必要なのが頭のお骨です。現在火が入って燃えていますが、頭のお骨やクチバシは、上の方に持ち上がって来てしまっています。
これから、首の所が綺麗に燃えて持ち上がっている頭やクチバシが上手く軟着陸して、マットの上に落ちてくれる事を祈るだけです。
ここで、火力を落として燃焼を続けました。
燃焼を抑えた訳は、頭やクチバシの軟着陸が上手く行くためにです。
火葬が開始して25分間で火葬は終了しました。
お客様に、「頭もクチバシも大丈夫ですよ。」と話すと皆さんニッコリです。
この火葬したお骨を、マットのままトレーに載せてお客様の前に持っていきました。皆さん食い入るようにお骨を見ています。
そこで、最初に書いたように、お客様から感嘆の声が聞こえてきました。
「これってお目目。」
「この前の長いのは、くちばしですか?」
「首のお骨の一番先に尖って見えてそのまま平らになっている所が喉仏です。」
「こんなに一杯綺麗に残るの?」「凄いです。」
「綺麗に残ると聞いていましたが、こんなに綺麗に全部のお骨が残るとは、思ってもいませんでした。」
綺麗に火葬できたひよどりちゃんのお骨を骨壺に銘々で入れています。
最後に頭のお骨です。
この頭のお骨は、未だ2週間しかたっていないヒヨドリちゃんですからお骨がまだ薄くて凄く脆そうです。お客様にはクチバシが確りと付いているのでこの場合は、「クチバシを箸で摘まんで入れた方が良いです。」と言い始めたら頭を箸でつかんで割ってしまっていました。
私の注意がチョッと遅かったです。
でも、割れた頭のお骨の他の部分は、クチバシを持って入れたら上手く入りました。
1.5寸の小さな骨壺に綺麗に入ってお骨上げは終了し、お客様方は喜んでいました。
お帰りに「これから新座までどの位掛かりますか?」と聞くと
「新座まで1時間半から2時間でしょう。」と言っていました。時間が掛かっても綺麗なお骨の骨壺を抱えてニッコリと笑顔で車に乗り込みました。
出発するのかと思ったら、皆さん車から降りて来て丁寧にお辞儀をして「本当に有難うございました。」とご挨拶を戴き、又車に乗り込みました。私たちも恐縮してしまって頭を下げましたが、お客様が喜んでいる証拠だと思いました。
どうぞ安全運転でお帰り下さい。
ヒヨドリちゃんのご冥福をお祈りいたします。