調布市からお越しのお客様でした。
調布からは45分から50分掛かりますが、予約時間の10分前にいらっしゃったお客様のペットちゃんは、7キロのかなり大きいミニュチュアダックスちゃんです。
そのペットちゃんを後ろ座席に寝かせて連れていらっしゃいましたので、霊園のトレーに載せて礼拝所へ運んで安置してから事務処理です。
霊園のご仏壇の脇に置かれたミニチュアダックスちゃんのお腹がそれは見事に盛り上がり触ってみるとフカフカな感じがしました。
「腹水ですか?」とお聞きすると「亡くなってからお腹が急に大きくなってしまいました。」と言ってお腹を擦っています。
未だ亡くなってから時間が経っていないのでしょうか、チョッと暖かいです。
礼拝所で読経をしてお葬式を行いました。
ミニチュアダックスちゃんを火葬炉に載せて霊園のお花で飾ってお別れして点火をみとどけました。ここからが火葬開始です。
今回のミニチュアダックスちゃんは、7キロもありますしお腹もパンパンに張れています。腹水なら良いのですが、これが脂分が溜まっていたら大変です。
今回の火葬はS-6のこの火葬炉で行うことが出来る最高難度の火葬の準備をして臨みました。
点火してから遺体に火が付くのを確りと見ながら火葬です。
お腹がパンパンなので火がついてから体が変な風に動いてしまってゴロリと転がってしまうペットちゃんもいますので、火葬開始してすぐから体が動かないように鉄棒で抑えながらの火葬です。
火葬し始めは頭の所やお尻の部分が動いています。途中抑えきれずに一回りし始めてしまいましたのでもう一度ちゃんと体が元の位置になるように移動させている最中でした。
火葬炉の位置を戻しながらお腹を見ているのですが、お腹から脂分が滲み出ています。チョッとやな感じです。そう思った瞬間の出来事でした。
何とあの大きなおなかが「ブッシュー。」と音を発てて引っ込みました。あの真ん丸なお腹が嘘のようにへっこみました。
あのお腹はガスが溜まっていたのです。脂分でなくて良かったです。でもこのS-6火葬の威力でしょうか、まったく燃え上っていません。
燃え上がらずに遺体に火がドントン付いて行って燃えています。
煙突からの黒煙も臭いも全くしません。
お腹の問題は解決しましたが、7キロのペットちゃんですから慎重に慎重に火葬を継続していく必要があります。
20分位経過したときに、燃焼が過燃焼気味になってきました。
開け放しにしている後ろの覗き窓から炎が「ボッ、ボッ」と吹き出し始めました。これが「過燃焼になりますよ。注意してください。」という危険信号です。
早速燃焼スウィッチを切って1次火葬炉の燃焼を止めました。スウィッチを切っても暫くはそのままの燃焼を続けていますが、火の勢いは今までとは全く違って穏和になってきています。
2次火葬炉の温度も1060度にもなっていますので、この一次燃焼を止めたことで2次燃焼室も温度がドンドン下がってきています。
2次が950度になったのでまた1次燃焼室のスイッチを入れて燃焼開始です。
燃焼を開始するとまた2次も1次も温度が上がってきています。
この1次火葬炉のスイッチを入れたり切ったりすること3回で元の燃焼に戻すことができました。
過燃焼が起こらないように1次のスイッチを切ると火葬速度が落ちてしまいます。
出来れば1次燃焼室の燃焼をスイッチを切らないで継続して行っていくことが理想です。
今回もその基本的な事を重視しながらも過燃焼になって黒煙や臭いが出ないように配慮しながら燃焼を継続していきました。
3回の切ったり入れたりの操作で、全く問題ない燃焼に移ることが出来ましたので、今度は燃焼を加速するために1次火葬炉を高燃焼に切り替え開始です。
この際も透明な排煙が変化しないかを注意をしながら温度をドンドン上げていきます。
この種の脂が多そうなペットちゃん、特にミニチュアダックスの火葬は、この高燃焼にするときも注意が必要です。
無事に高燃焼にすることも出来ました。
後は、時間の経過を見ながら完全に遺体が燃え尽きてお骨の髄まで火が通って火葬が完了するのを待っていれば良いのです。
でも、ここで陥りやすいのが火葬が終了したように見えてまた終了していないときがあります。
覗き窓からでは見えない部分の燃焼が未成であったりするのでここは火葬が終了したと思っても後5分の精神を持つことです。
時間に囚われずに綺麗な火葬をする極意なのです。
おかげで火葬時間も45分で終了することができました。
それにしても、7キロのミニチュアダックスちゃんのお腹があの様に大きく膨らんでいると火葬する方も緊張します。でもお客様が喜んだお顔を拝見するとホッとした気持ちになります。
脾臓に大きな腫瘍があるお骨ですが綺麗にそのままの形で残ることができました。
お客様の満足そうなお顔に接して火葬が終了したことが私たちの励みになりました。