お帰りになるときにお客様が車の窓から顔を出してワザワザ言ってくれました。
「口ばしを見つけて頂いて有難うございました。」
本当に嬉しそうにご挨拶を頂きお帰りになりました。
羽衣インコの火葬のお客様でした。
他の火葬場も検討したそうですが、当園のインコのブログやホームページを見て決めたそうです。
火葬中も、ずっと火葬している廻りで見ていました。
「この子は、喋るんです。」「朝起きたら おはよ。」とか。
「昔話もするんです。 むかし、むかし。」とか。
ご夫婦とお嬢様と息子様の4名でいらっしゃいましたが、礼拝所のお葬式の時はすすり泣きをしていらっっしゃいました。
この家族には、無くてはならない存在の羽衣インコのチャチャちゃんでした。
火葬中も、火葬炉の廻りから離れません。
大事な羽衣インコのチャチャちゃんとのお別れをひと時も逃すまいと火葬炉の所でチャチャちゃんの思い出話をしていらっしゃいました。
火葬している最中に、火葬炉の傍にいるので火葬炉の中を見ますか。と質問すると「中を見ていいですか。」と恐る恐る中を見て「手前にあるのが頭ですよね。」と質問されました。
チャチャちゃんは、火葬炉でお別れした位置とは変わってしまって、火葬し始めて少し経つと自分で火の方に頭をドンドン向けて行きました。
そして、頭のお骨を上に向けて、暫くすると頭を下げて口ばしを下のお布団に付き指すようにして燃えています。
お客様は、丁度その恰好を見ていました。
頭もクチバシも首のお骨も胴体をつないだ形で真横の向きになってシルエットみたいな形にみえます。
皆さん交代でその姿を火葬炉の小窓からのぞいて綺麗に火葬が進んでいることを確認しました。
お客様の、期待もドンドン上がるばかりです。
火葬時間は25分間でした。
こらから、火葬炉の蓋を開ける時が一つの山です。
火葬炉の中と外の温度差があり、中な熱い空気が外に噴出して羽衣インコちゃんの頭を吹き飛ばす可能性があります。
又、火葬炉の蓋を空けるので煙突から出ていた熱風が弱まり、今吹いている風が煙突から入って来て頭のお骨を外に吹き飛ばすこともあります。
お客様に、今ふたを開ける時が一番緊張します。と言ってから蓋を空けてみました。
あれ、頭がない。
お布団に上に口ばしが下を向いていたお骨が、お布団の上にありません。
懐中電気で確認してもありません。
止もう得ず、受け皿をその儘火葬炉から引っ張り出しました。
ありました。
お布団の上から吹き飛ばされて網とお布団の間に挟まっていました。
そのお骨を皮手をして手で摘まんでお布団の上に帰してから、お布団のままトレーに載せて礼拝所に運びました。
この、頭のお骨が吹き飛んだ時点も頭のお骨を摘まんでお布団の上に置いたのもお客様の前で行いましたので、全部見ていました。
頭のお骨がお布団の上に帰ってきただけでお客様は満足した様子です。
然しながら、私としては満足すらしていません。
実は、頭のお骨の前に口ばしがインコちゃんには付いています。
それが、無いのです。
お客様の前にトレーに乗せたお骨をお持ちしてから口ばしを探しました。
上向きに火葬炉の中に落ちて入ればすぐわかります。
しかし、横向きとか立てだと分かりません。裏返しでも分かりずらいです。
口ばしは薄いですから、中々見つかりませんでしたが、やっと見つけました。
火葬炉のお布団の上から蓋を空けた時に外からの風と中と外の温度差で吹き飛んでしまったのです。その口ばしが縦に火葬炉内に置いてあるレンガのところにありました。
お客様に早速、その口ばしをお持ちして火葬炉内に吹き飛んでしまった事をお詫びしてからお渡しさせて頂きました。
お客様は、口ばしの事は気が付いていませんでしたが 。、口ばしを渡すと「ホント、くちばしですね。嬉しい。」と言って顔中が笑顔で一面になりました。
お帰りになるときに、わざわざ口ばしを拾ってくれたお礼を頂きましたが、私もくちばしが見つかってホッとしています。
インコの火葬は難しいですね。